著者は外務省に勤務しウクライナに駐在されたと言う経歴のある方で、日本とウクライナの歴史についても詳しく、この本にも戦後の芦田首相が外交官として交友があったことなどを書かれている。現在のウクライナ情勢を理解するために読んだが世界史に不慣れで読むのにすごく時間がかかってしまったがウクライナの歴史を知るのにとても良い本だと思う。
現在のウクライナの土地にはスキタイ人と言う先住民がいたが3世紀半ばには滅んでいる。その後879年ごろにできたキーフ・ルーシ公国を始めとする複数の公国は周辺国からの流入によって出来た寄せ集めの国家だ。
キーフ・ルーシ公国は1240年モンゴル帝国により陥落、周辺公国の一つであるハーリチ・ヴォルイニ公国はそれから1世紀近く存続した後、14世紀半ばにハーリチがポーランド、ヴォルイニがリトアニアに占領された。
ウクライナの起源をどこに置くかでロシアとウクライナの間で意見が分かれるが、ウクライナ側は、ハーリチ・ヴォルイニ公国を起源と主張しているという。最初のウクライナ国家は14世紀半ばに滅びたが、ポーランドは民族運動を弾圧したが、リトアニアは寛容だったためキーフ・ルーシ時代の言葉・慣習がロシアに支配されるまで200年近く残った。
ポーランド・リトアニア時代には領主の農民への締付けにより、ウクライナ南部ステップ地帯の遊牧民コサックと合流、16世紀にコサック(ヘトマン)国家を形成。1651年ポーランドに敗れ、同じく周辺公国の一つであったモスクワ大公国(ウラジミールスーダリ公国)と同盟国と協定を結ぶがこれが破滅への一歩となってしまう。1667年モスクワ大公国がポーランドとウクライナの分割を恒久的に確約すると言う協定を結んでしまい、1709年にモスクワに戦いを挑むも敗れ、1783年にはヘトマン国家は消滅、ロシア・オーストリア両帝国の支配となる。
ロシア帝国下ではウクライナ民族弾圧が進んだため、オーストリア帝国下では啓蒙活動が進み民族主義活動が進んだ。しかし第一次世界大戦下の1914年ハーリチナのロシア占領により弾圧を受ける。1917年2月革命によりロシア帝政の崩壊とソ連の樹立のゴタゴタにより、ウクライナのロシア内での自治を認められ、ウクライナ・ソヴィエト共和国(傀儡政権)が樹立。西ウクライナを中心としたウクライナ国民共和国を独自に樹立したが、1919年ロシア・ボリシェヴィキ政権に敗れ独立闘争は閉幕、束の間の独立であった。
ウクライナ・ソヴィエト共和国ではスターリン政権下では搾取と飢饉、粛清による大虐殺が行われ、ポーランド支配の西ウクライナでは民族活動が行われる。第2次世界大戦時1939年、ソ連がポーランドに侵攻、ハーリチナ・ヴォルイニ地方がソ連に編入、モルドヴァ共和国を除いてウクライナは再統合される。1990年ロシア、ウクライナがそれぞれ主権宣言を行い、ソ連解体とそれに伴うウクライナ独立が国際的に承認された。1991年国民投票が行われウクライナの完全独立について各州で投票が行われロシア人の多いクリミアを含め全ての州で過半数を得る。ウクライナにとってはロシアからの350年来の流血を伴わない喜ばしい独立であるが、この独立は当時のロシアの内政がゴタゴタしていたためでウクライナにとっては棚ぼたであったろうと著者は言っている。現在2022年のロシアのウクライナ侵攻の一員としてソ連解体時に手違いがあったとプーチンも言っている。
ウクライナは地形的にモンゴル帝国、トルコ帝国、東ローマ(ビザンツ)帝国、ロシア帝国と列強に囲まれ、ウクライナ人は歴史的にいつの時代も戦火に巻き込まれていたとわかる。しかしそれに巻き込まれるウクライナの人達はたまったものでないだろう。一刻も早い平和的な解決を望みます。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m