ソ連歌謡ー蒲生昌明
今何かと話題のロシア、ウクライナ等の国の前身、ソ連東欧諸国連合の音楽事情について、ソ連向けの日本ラジオの愛聴者であるという作者が代表的なソ連歌謡についてまとめた本。
来日したこともあるソ連の美空ひばりとか、セクシー過ぎてテレビ出演禁止になったソ連のマドンナとか、紹介文がみんな面白くてどんなのか聴きたくなってしまう。
そういう人のために英語表記のアーティスト名も載っているからYoutubeとかでほとんど見つかる。
第1章はシャンソンっぽい曲が多い気がする。日本の戦後のりんごの歌みたいな曲が多い。
第2章はVIAと呼ばれるグループサウンドが中心。ソ連ではロック音楽自体はありふれているが、反体制という意味のロックという言葉を認めておらずVIAという言葉になっているという。ビートルズに影響を受けたバンドが多いのか、ロシアンビートルズというバンドまである。
ビートルズやDoorsの影響を受けているというSamotsvetyの「僕の住所はソビエト連邦」という曲。複数名男性のコーラスやハードロックっぽいギターはいかにもそれっぽい。
Vladimir Migulyaさんの庭の草という宇宙飛行士の歌でロケット打ち上げの際にはこの曲が流れるらしい。ツインギターを弾いている彼は日本でも通じる細身でやさ顔のイケメンだが、ロシアの女の子はマッチョが好みで客層は主におばさん世代が多かったらしい。しかしVladimirさんは恐ろしい事件に巻き込まれ命を落としておりその生涯はかなりハードだったようだ。
第3章は映画音楽が中心、戦艦ポチョムキン、惑星ソラリスなどのソビエト映画で流れる映画音楽を彩った音楽とのこと、題名は聞いたことがあるが映画自体未視聴なのでなんともいえない。コラムでソビエトの誇る偉大な作曲家ショスターコヴィチは、国から粛清されるかも知れないという恐怖の中で曲をつくっていた、いうこと。音楽的な特徴はあるのかないのかよくわからなかった。
第4章ではソビエト圏でもロシアに属していない国の音楽を集めている。
カザフスタンやラトビアのzodiacというグループはラトビアのYMOと呼ばれるテクノポップグループだが、アルバムジャケットといいジャーマンプログレの様相がある。
・・・などなど、他にも濃いアーティストがいっぱいでしたが、驚くことに誰一人として名前を知っているアーティストがいなかった。でもソ連歌謡が日本人に全く馴染みがないかといえばそうではなく、有名な百万本のバラの歌はソ連歌謡で、日本の紅白歌合戦に出場した人もいたらしく目から鱗だった。
また著者のマニアックな情報でたくさん笑かしてもらい、たくさんの良い音楽にも出会うことができ、大変に興味深い本でした。同じシリーズで共産テクノソ連編と東欧編なる本も出ているとのことでそちらも要注目ですね!