音学史に刻まれたロック〜英国プログレッシブ・ロックと反体制文化ーエドワード・マッカン(余田安広訳)

著者はアメリカ人、大学教授、ミュージシャン、作曲家であり、他にエマーソンレイクアンドパーマーに関する著作があるらしい。

 
プログレッシブロックを扱っている書籍は日本ではあまり多くないと思うが、プログレッシブロック全体を俯瞰するという意味ではこれ以上にまとまった本はないのではないだろうか?
 
基本的には大変読みやすい本だが、大学教授らしく各バンドの代表作をいくつか挙げて・・・和声、拍子、旋律が黒人音楽や宗教音楽との類似点が見られる・・・東洋思想や神学などの文学的表現が歌詞に見られる・・・のようにアカデミックな観点でガチガチに論じている章もあり、残念ながら私の理解が追いついていない箇所も多く残念だ。
 
シンコーミュージックから出ていたディスクガイドシリーズの青本と赤本はこの本を読む上で理解を助けてくれたーーこのディスクガイドシリーズではイエス、エマーソンレイクアンドパーマー、ジェネシスピンクフロイドのそれぞれ異なる音楽性のバンドが赤本に掲載されていて、キングクリムゾン、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイター、カンタベリー出身グループのジャズ寄りのバンドが青本に載っている。
 
また著者のロバートフリップ評で、「目にも止まらぬクロス・ピッキング」、「ミニマリズムプログレッシブロックとの結びつきを最も強めたミュージシャン」「プログレッシブロック分野には、自由な型の即興の名手が何人かいた(最も傑出していたのは、キング・クリムゾンロバート・フリップ)」とかなり好意的な表現があり
ーーロバートフリップは英国出身のプログレッシブロックバンドの雄とも言われるキングクリムゾンのバンドリーダーであり、私が最も尊敬するギタリストの一人でもある
 
私はフリップが世間からあまり正当な評価をされていないような気がしていたので、読んでいて嬉しくなってしまった。
 
例えばこの間読んだジェネシスのギタリスト・スティーハケットの自伝にこのような記述があった。
 
ロバートフリップとスティーハケットが軽食をつまみながら話をしていて、途中でフリップがハケットに「ハケットが軽食のチーズを食べ過ぎており、本来フリップが食べるべきチーズも食べてしまっている」のような食事のマナーを注意された、だがハケットがふざけてさらにチーズを摘んだら二度とフリップに話をしてもらえなくなった、という。
 
おそらくこれは単なるハケットのジョークだが、それに近いニュアンスでフリップのことを茶化すような空気が私の周りに昔から蔓延しているような気がする(ネット界隈の書き込みにも近いものを感じるが、ネットに毒された人々なのだろうか?)
 
もしプログレッシブロックが大好きな人であれば、手元に一冊置いておいても良いのでないかと思います。